鹿実圧勝!安打15得点
決勝は神村VS鹿実

【準決勝・鹿児島実ー出水中央】4回表鹿実二死一二塁、4番・中村龍の右越え二塁打で二走に続いて一走・垣尾も生還、7-0とする
第67回鹿児島県選抜高校野球大会第8日は5月31日、鹿児島市の平和リース球場で準決勝2試合があった。鹿児島実は出水中央に11安打15得点、五回コールド圧勝した。神村学園も鹿屋中央に7-0で七回コールド勝ちだった。最終日は6月1日、球場で神村―鹿実の決勝戦がある。
◇31日の結果 ・準決勝(平和リース)
神村学園 7-0 鹿屋中央(7回コールド)
鹿児島実 15-1 出水中央(5回コールド)
◇1日の試合 ・決勝(平和リース)
12:00 神村学園―鹿児島実

「史上最弱」チームの逆襲・鹿児島実

鹿児島実が11安打15得点、わずか1時間26分のスピードゲームで、春4強の第3シード出水中央を鎧袖一触で寄り切った。
4番・中村龍志(3年)の打棒が打線を勢いづけた。2回表、先頭打者のソロ本塁打で口火を切る。本塁打は全く狙っていなかったが「チームを勢いづける打撃がしたかった」意気込みで振り抜いた打球は、バットの先だったが、この日左翼方向に強く吹いていた風に乗ってスタンドインした。
この回の5得点は、この本塁打に動揺した相手先発投手の四球、エラー、暴投などが絡んでのものだったが、本来の底力が発揮されたのが4回の2得点だ。この回から出水中央のエース坂口楓(3年)がリリーフして、簡単に二死となってから2番・奥楓河(3年)、3番・垣尾義弘(3年)が連打で出塁。2回と同じく「チームを勢いづけたかった」4番・中村龍が3ボールからの4球目を仕留めて右越え2点適時二塁打を放つ=写真=。「二死から、ああいう勝負強さが出てきたことは大きな収穫」と宮下正一監督もチームの成長に手応えを感じた攻撃が、鹿児島実打線をより勢いづけ、5回の大量8得点につながった。
今季の鹿児島実は昨秋準優勝で九州大会8強と好成績は残したが、今春は鹿児島城西に3回戦で2対10、7回コールド負けの屈辱を味わった。昨夏のチームでベンチ入りした選手がほぼいなくて、総入れ替わりとなり「史上最弱」と指揮官から厳しい言葉を浴びせられたチームだった。春の屈辱から奮起し、今大会準々決勝ではライバル樟南に完封勝ち、この日も第3シード出水中央を圧倒したが「史上最弱の看板は下ろしません」と宮下監督。「鹿児島の老舗」を自負する鹿児島実としては、あくまでも夏の鹿児島を制して甲子園をつかむ使命を果たすまでは、妥協しないつもりだ。
「不動のリードオフマン」に成長
鹿実・髙野(朝日中卒、奄美新聞掲載)

今大会から1番、右翼手でスタメン出場を果たしている髙野陽太(朝日中卒)。この日も4打数2安打2打点と打撃で勝利に貢献した。
初回の先頭打席は初球を打ち損じて投ゴロ。本来なら初回の先頭打者はボールをじっくり見て次打者以降に攻略のヒントを与えるのも仕事だが「力が入ってしまった」。宮下正一監督も「次は代えようかと思った」が、「力を抜いて思い切り振ることだけを考えていた」2打席目では4点目となる汚名返上の右越え適時三塁打を放った=写真右=。
昨秋は出場機会がなく、今春から背番号17ながら出場機会がもらえるようになり、今大会は背番号9とリードオフマンとしてレギュラーを獲得した。元々は3年生の室屋友郎が1番を打っていたが「室屋はどの打順でもこなせる選手。髙野が不動のリードオフマンとして成長してくれていることで起用の幅が広がった」と宮下監督は言う。「ベンチに入れず、試合に出られない選手の想いも背負って、全力プレーを心掛けている」と髙野。自身も試合に出られない期間が長かったので、鹿実のユニホームを着て試合に出る選手の心意気を強く感じている。
新チーム結成当時から昨年の試合経験者がほぼいなくて「史上最弱のチーム」と宮下監督から言われていた。今春は3回戦で鹿児島城西に打ち込まれて無念のコールド負け。「悔しい気持ちを全員がぶつけて」練習に励み、今大会は昨夏の先輩たちが苦杯を味わったライバル樟南を完封。この日は春4強のシード出水中央を圧倒し、2年間県大会負けなしの神村学園への挑戦権を得た。「あすは勝っても負けても、内容のある夏につながる試合をしたい」。どんな「切り込み隊長」ぶりを発揮するか、注目したい。
「役者の違い」を示す・神村学園・入耒田

2年間県大会無敗を続ける神村学園打線と、準々決勝で強打・鹿児島城西を抑えた好左腕・溝淵爽(3年)との対決が大きな見どころだったが、序盤で溝淵を攻略した神村学園が、守備でも被安打3、三塁を踏ませない快勝で、決勝に進んだ。
溝淵は直球に球威があり、ボール球のスライダーを右打者の膝元に投げて空振りがとれるのが持ち味だが、神村学園の各打者はボールになる球には手を出さず、打てるボールを着実にとらえる。3回までに溝淵は61球、被安打7、5失点で降板。計13安打7得点、わずか1時間34分でコールド勝ちと、神村学園の効率の良い攻めが光った。
好調な打線の中でも際立ったのは2番・入耒田華月(3年)=写真=だ。全4打席で三塁打1本、二塁打3本を放ち、2打点を挙げた。いずれも初球、もしくはファーストストライクを的確に打ち返している。中心打者である入耒田と今岡拓夢主将(3年)に小田大介監督が求めるのは「役者の違いを示す」こと。基本的にバントはなく、打って返す仕事が与えられている。当然、相手チームもこの2人を要警戒打者としてマークする。この日、3番・今岡主将が4打席中3死球だったように、ぶつけて死球なら御の字と割り切るぐらいの厳しいボールを投げてくる。
ひと頃は入耒田もそういう厳しいボールを打とうと、躍起になり、ともすれば「当てにいく」(小田監督)打撃になっていたが、ここへきて少しずつ「打てるボールをしっかり打つ」感覚が少しずつ分かってきた。その成果がこの日の4長打だった。「2人とも良い状態で打てるのはなかなか難しい。どんな時でも自分が打ってチームを勝たせる選手になる」。これが1年夏からベンチ入りして、全国でも場数を踏んでいる入耒田の矜持である。