神村3連覇!
鹿実に競り勝つ

【決勝・神村学園ー鹿児島実】4回裏神村二死二三塁、暴投で三走・西原が生還、3-0とする
第67回鹿児島県選抜高校野球大会最終日は6月1日、鹿児島市の平和リース球場で決勝があり、神村学園が鹿児島実に6―4で競り勝ち、3年連続7回目の優勝を果たした。初回、神村は3番・今岡主将、4番・梶山の連続適時打で2点を先取。四回にも2点を加え、序盤は優位に試合を進めていた。鹿実は五回に2点、六回に1点を返して1点差に詰め寄る。神村は七回にエラーで2点を追加。九回表、鹿実は1点を返し、なお二死満塁と最後の粘りをみせたが、神村が2点差で接戦をものにした。
◇1日の結果 ・決勝(平和リース)
神村学園 6-4 鹿児島実

「まだまだ、やれるはず!」・神村学園

「やはり、簡単には勝たせてもらえないですね」。神村学園・小田大介監督が試合後に振り返る。3年連続7回目の優勝を勝ち取って、2年前の本大会からスタートした鹿児島県大会の連勝記録は「40」に伸ばしたが、「本命」の夏の大会に向けてはまだまだ課題山積であると、気持ちを引き締め直すきっかけになった。
序盤は良いペースで試合を進めていた。1回裏、一死から2番・入耒田華月(3年)が9球粘って四球を選び、3番・今岡拓夢主将(3年)が初球を右中間に運んで先制。打ってはいけないボールを見逃す「見極め」、打つべきボールを打つ「思い切り」、その匙加減が実に絶妙だと感じた先制点だった。「ファーストストライクから積極的に打つつもりだった」4番・梶山侑孔(2年)も左前適時打で続き、上々の立ち上がりだった。
4回には暴投などで2点を追加し、流れは神村学園にあるかと思われたが、目の前の鹿児島実は簡単に勝たせてくれる相手ではなかった。

先発の右腕・末廣翔(3年)=写真=は130台後半の直球に縦のスライダーが絶妙だった。2回以降は変化球主体の投球に切り替えてくると、神村学園の「見極め」と「思い切り」のさじ加減も狂い出す。打つべきボールを打てず、打ってはいけないボールに手が出てしまう。
「力強さ」がいつしか「力み」に変わって思うように点が入らない。加えてエラーが絡む失点があれば、流れが相手にいって1点差まで追い上げられるのは「必然」だ。エラーからの失点など「流れを切るプレー」(小田監督)があったのは、夏3連覇を目指すなら何より修正しなければいけない点だ。「もっと考えて野球をやらないといけない」と小田監督は試合後、選手たちに語り掛ける。攻撃でも、守備でも、ベンチで控えている選手にも、それぞれが、それぞれの場面で果たすべき仕事があるはず。それを考えられる集団になることも、夏への宿題だ。
昨年の今岡、入耒田、早瀬朔(3年)のように「チームを勝たせられる選手が2年生の中から出てくる」(小田監督)ことも必要だと感じている。その意味では2年生4番の梶山にその「芽」が見えたことは「収穫」だった。初回の適時打。5回はボールをしっかり見極めて四球を選び、7回は縦の変化球をしっかり読んで、中前に弾き返した。打球が速くて適時打にはならなかったが、結果的には好機が広がり、エラーで決勝点となる2点を追加するきっかけになった。「追い込まれたら、バットを短く持ってコントロールする」ことを意識していたのが功を奏した。
「野球には『絶対』がない。前回良かったから今回も良いとは限らない。今回打てたから、次打てる訳でもない。だからこそよく考えないといけない。今大会は良い学びが得られた大会だった」と小田監督は言う。今大会優勝できたからといって夏3連覇できる保障はどこにもないが「お前らなら、まだまだやれるはずだ!」と檄を飛ばしていた。
窪田(伊仙中卒)VS髙野(朝日中卒)
見応えある好勝負(奄美新聞掲載)

神村学園の先発左腕・窪田瑶(伊仙中卒)=写真右=と鹿児島実のリードオフマン・髙野陽太(朝日中卒)=写真左=。奄美出身の2人が決勝戦で見ごたえある好勝負を繰り広げた。
序盤は窪田の好投が光った。初回、髙野への初球は137キロの直球。球速は138、139キロとアップし、髙野はフルカウントまで粘るも、最後は140キロ、高めのボール球を空振り三振だった。三回の2打席目も軍配は窪田に上がり、右飛に打ちとった。

「球が速くて、良い投手だと思った」と髙野。だが3打席目の五回にチームの反撃の狼煙となる右前適時打を放った=写真=。簡単に追い込まれ、タイミングを外した変化球を打たされた形だったが「チームに勢いがあったので、うまく右前に落ちた」。七回の4打席目は直球を見事に中前に弾き返す。「中盤からは球速も落ちて、打てない感じはしなくなった」。
窪田は九回一死まで投げたが、2つの四球を出して降板。2人の投手のリリーフを仰いで「勝利投手」にはなったが「技術、体力がまだまだ足りなかった。チームを勝たせる投球ができなかった」と反省しきりだった。

春の九州大会、準々決勝の東筑(福岡)戦で先発し「不本意な投球に終わってしまった」が準決勝・明豊(大分)戦までの間に「リリースポイントにもっていくまでのフォームの感覚で、『これだ!』とつかんだものがあった」と準決勝、決勝・西日本短大付(福岡)戦で好投し、先発の柱へと成長した。「任せられたイニングをしっかり抑えられるようになりたい」と夏までの課題を話した。
対する髙野も今大会で急成長し、切り込み隊長役を任されるようになった。夏までの課題は「1打席目の集中力」だと言う。神村学園と鹿実、甲子園を目指す両校で投打のカギとなる2人のハイレベルな活躍は、夏の大会の大きな見どころになりそうだ。