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2025年度体操国民スポーツ大会九州ブロック鹿児島県予選会

錦井(出水商高)、中島(順天堂大)らがV!

 体操の2025年度国民スポーツ大会九州ブロック鹿児島県予選会兼九州小学生体操大会県予選会は6月8日、鹿児島市の県体育館であった。国スポ九州ブロック県予選では少年男子は錦井大翔(出水商高)が71・700=写真上=、同女子は中学3年の松谷妃彩(タートルスポーツクラブ)が47・599、成年男子は大木悠真(鹿屋体大)が76・200、同女子は中島裡埜(順天堂大)=写真下=が48・499それぞれ制した。九州小学生県予選会の男子は、6種目中4種目で1位だった坂上雄太(タートルスポーツクラブ)が64・250、女子は4種目全てで1位だった松谷維菜(同)が44・199で、それぞれ優勝だった。

※少年男子優勝の錦井選手の鉄棒と成年男子種目別跳馬優勝の川崎大智選手(出水体操クラブ)の演技をYouTube動画でアップ!

「先生、ガンバ!」大声援を背に
タートルスポーツクラブ

 長年、体操の県大会を取材しているが、県体育館の応援席が盛り上がった大会を見るのは初めてかもしれない。タートルスポーツクラブはこの日、小学生から成年男子までクラブ所属の選手たちが出場する大会を応援しようとSNSなどで呼びかけたところ、教室に通う子供たちやその保護者ら約100人が大声援を送り続けていた。

 成年男子で出場したのは名和秀馬、早坂晶宗、松倉祐代の3選手。いずれもクラブの体操指導員である。演技が始まる前は必ず「〇〇先生、ガンバ!」と応援席から声を掛けられる。そもそも県内で成年男子の正式な大会を直接見られるのは年1回のこの大会だけといっても過言ではない。演技する選手にとっても、応援する人たちにとっても貴重な機会だった。

 「緊張しました」。最年長28歳の名和=写真=は言う。応援してくれているのは日頃自分が指導している「教え子」たち。「下手な姿は見せられない」と力が入った。つり輪で1位、ゆかで2位だったが「うまくいったところもあれば、まだまだと思ったところもたくさんあった」と分析。カッコいい姿を見せたい気持ちは当然あるが「うまくいかない、失敗した姿をみせることも大事」と言う。何より大切にしているのは「挨拶」であり、応援に対しては必ず、手を挙げ、礼で感謝の気持ちを示すことを忘れなかった。

 名和は大阪、4年目の早坂=写真=は山形、社会人「ルーキー」の松倉は福岡と、鹿児島県外の出身。いずれも大学を卒業して、「社会人でも体操を続けたい」と志を持って鹿児島にやってきた。九州共立大時代、インカレ2部のつり輪で2位などの実績がある名和だが、五輪代表を輩出するような中央の大企業やクラブのハードルは高い。そんな選手たちを「指導員」として採用しているのが同クラブだ。選手たちは午前中自分の練習をして、午後から教室の指導という生活をしながら、それぞれの目標に向かって精進している。名和は3年前の栃木国体の鹿児島県代表として5位入賞に貢献している。「今出られる大会、一つ一つに全力投球し、あわよくば大きな全国大会にこのチームの選手として出たい」という夢を追い続けている。

 「中学生や高校生とはレベルが全然違う」と話すのは小学3年生の水流薫君。最近選手コースにも通い出した。日頃見慣れているはずの「先生」たちのレベルの高い演技に魅了されていた。小学5年生の濱涯和奏さんは「自分たちがやっている女子の種目と違って、つり輪とか、とても力強かった」と感想を話していた。

 永井セツ子さんも「応援団」のメンバーだった。御年96歳。クラブの健康体操コースに通っている。「足が悪いんですけど、きょうを楽しみにしていました」と言う。戦前、川内の高等女学校に通っていた頃、器械体操をやっていた。「鴨池であった大会にも来たことがあります」。今の県体育館ができる遥か以前の話である。「明治神宮であった全国大会の出場権もとったけど、戦争で中止になった」思い出もある。「自分たちの頃は平均台や跳び箱だったけれど、今は全然違いますね」と終始興奮しっぱなしだった。

身体が動き続けるかぎりは…
知識

 社会人選手の知識佳穂理(Ramona体操クラブ)にとっては、とても楽しみにしていたことがあった。宇都咲理菜(大阪体大)、石川結愛(大阪産大)、自分の教え子と一緒に選手として試合に出る。中1から体操を始めて競技歴23年目、36歳にして初めての体験に心躍った。

 「本当なら去年12月の『琉球カップ』で引退するつもりだったんですが…」と笑う。今年4月、協会から出場を打診された。成年女子の出場選手が4人しかいない。国スポの団体は4人+補欠の1人、最低5人がそろわなければ大会出場すら叶わない。「根っからの体操好き」を自負する知識は、あっさり「引退宣言」を撤回。「練習はこの1カ月半の間で4、5回した程度」だったが、満を持して出場した。

 跳馬、段違い平行棒、平均台、ゆか、4種目全て通すのは至難の業。選んだのは段違い平行棒のみ。「これが膝に一番負担がない」のが理由だった。直前まで演技の構成も決めていなかったが、「下手な失敗をする姿は見せられない」という「先生」の意地もあり、無難な演技構成でまとめた。得点8・900は宇都の8・200、石川の7・866を上回った。自分の持っているベストのイメージを10とすれば「1か2の出来」だったが「大きな失敗はなく、今できるベストは尽くせた」と納得顔だった。

 「体幹がしっかりしていてとてもキレイだった」と石川。クラブ出身の選手で大学でも競技を続けたのは2人が初めて。「自分も先生と一緒に試合に出るのを楽しみにしていました」と宇都は言う。

 10代前半でも全国の舞台で活躍する選手はざらにいて10代後半、20代前半でピークを迎え、引退していく女子選手は多い。知識が30代半ばを過ぎても現役を続けるのは「体操も長く続けられる生涯スポーツである」ことを示したい気持ちが強いからだ。肉体的なピークもさることながら、女性の場合は体操に限らず、就職、妊娠・出産などがきっかけで競技を離れる選手も多い。自身もシングルマザーとして、1人息子で小学6年生の龍昇君を育てながら、仕事、育児、体操教室の指導者、そして選手と「4足」のわらじを履いて、競技を続けている。

 2年前の鹿児島国体で代表になることを大きな目標に掲げていたが、2年前の本大会でゆかの着地の際に右足を骨折。夢を断念せざるを得なかったが、「身体が動き続けるうちは体操を続けたい」という気持ちはいささかも揺るがない。この日は選手としての出場もさることながら、小学生大会に出場した龍昇君の監督でもあり、宇都や石川と同じチームの選手兼監督でもあった。ジャージとユニホームを度々着替えながらの多忙な一日だったが「楽しかった」と満面の笑顔で語っていた。

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