来季以降のレブナイズは?

鹿児島レブナイズの山崎俊オーナーと鹿児島県バスケットボール協会の鮫島俊秀会長とのスペシャル対談の3回目。24ー25年シーズンのレブナイズを総括し、県協会が中心になって鹿児島から日本一のバスケットを目指す想いを語ったしめくくりは、来季以降のレブナイズがどうなり、どうしていきたいのかを中心に語り合った。レブナイズは誰のものか? 誰が背負っていくのか? 確信に迫る議論となった。

イラスト ぽたろ
レブナイズは誰が背負うのか?
政 次は来季のレブナイズについてです。25―26シーズンに向け、カレロHCの続投が決まり、AJをはじめ何人かの選手の継続、新加入選手の話題も出ているところです。かつてのレブナイズの選手で、昨季まで山口でHCをしていた鮫島和人氏のGM就任も発表されました。2026年秋にはBプレミアムの発足など、Bリーグ自体が新たな局面を迎えているところですが、来季までは現状のB2に挑むレブナイズとしてはどのような構想をお持ちですか? まずはオンコートの面でどんなバスケットを描いていますか?

山崎 来季に向けてのことはまだ確定はしていませんが、これまで一貫して「鹿児島ショータイム」を掲げていました。我々がやろうとしていることは、レブナイズが鹿児島のエンターテイメントのセンターピンになっていこうとすることに変わりはありません。リーグの戦いでどこを目指していくかは、選手12、3人が確定してから、明確な目標を掲げようと考えています。やるからには優勝を目指す、チャンピオンを目指すということも変わりません。
政 コート外での、売り上げ面などについてはどうでしょうか?
山崎 大きな意味では「誰が背負うのか?」ということを思っています。来季のレブナイズのことも含めて、レブナイズは売り上げ面などでも着実に伸びてきている。我々は寿命で亡くなりますが、レブナイズはもうなくならないと思うんです。これから50年、100年と生き続けるチームへとなりつつある。鹿児島県がある限り、レブナイズは生き続ける。今まさにレブナイズは鹿児島のエンターテイメントのセンターピンになろうとしています。今、そうなれそうなところまで、光は見え始めました。ではこの存在を誰が背負っていくのか? 来季の売り上げ目標について、誰が掲げるのか? 筆頭株主である私が掲げるだけでいいのだろうか? そんな葛藤が今、私の中にあるところです。
政 なかなか確信に迫る話ですね。「誰が背負うのか?」という話は山崎代表が折に触れて話していました。例えば、来季チーム編成の責任者であるGMに鹿児島出身である鮫島和人氏を起用したというのも、最終的には「鹿児島の人間にレブナイズを背負って欲しい」ということのメッセージなのでしょうか?

山崎 地域のプロスポーツチームは誰のものなのか? レブナイズは誰のものなのか? そういうことまで、皆様のご意見も含めて、考える時期に来ていると思うのです。そういうフェーズに今レブナイズも移行したということです。
県協会は誰が背負うのか?
鮫島 山崎代表の話からスケールダウンしますが「鹿児島県バスケット協会は誰が背負うのか?」という話に通じるものがあります。
例えばレブナイズの試合でTOをやっているメンバーは、うちの協会で派遣していますが、ピカ一だと思います。それなりに研修も積ませています。レブナイズというプロの試合でTOをするということが、彼らの大きなモチベーションになっています。審判も同じです。かつては鹿児島の審判3人でレブナイズの試合を吹いたこともあります。TOも、審判も、それぞれが目指したい自己実現を果たすためには、そこにレブナイズがあり、県協会がないと実現できない話です。県協会に関わることが自分にとってのプラスになるという明確なビジョンを示してあげないといけない。おかげさまで鹿児島にはレブナイズがあるので、それを示しやすい。

先程話したサミットやウインターカップで「晴れ舞台」を作るというのも、教員の皆さんたちにとっては子供たちのために、協会の一員として働くことが大きなモチベーションになる。自己実現ができる組織だから、県協会は力を持つことができる。そういうかじ取りをしていくのが今の自分の役目だと考えています。県協会は誰が背負うのか? その中にいたら、自分の人生が豊かになるという自覚を、給料以外の面で持ってもらうようにしていくことが今の自分のミッションです。それがひいては鹿児島の活性化にもつながると、一生懸命各位に話して回っているところです。先程、山崎代表が話された「誰が背負っていくのか?」という問いは、スケールダウンした話ですが、同じことを我々も考えている。お互いに突き合わせて、話ができたらいいと本気で思っています。
ここで自分の人生が実現できる、チャレンジできる、背負いたいと思うような人間が出てくるようなレブナイズを作って欲しい。その道筋は今、山崎代表が血を流しながら作ってくださっている。その方向性は、県協会も同じです。「レブナイズは誰のものか?」その問いをいろんな人に問いかけて、その答えにはとても興味がありますね。レブナイズの選手、スタッフ、Wizの社員、ブースター…その問いこそが今価値のあることなのではないでしょうか?
レブナイズは「鹿児島のもの」?
山崎 政さんはどう思いますか?
政 分かりやすい答えは「鹿児島のもの」でしょうか。鹿児島のものであるということは、私のものでもある。立場は「報道」ということですが、何か私も鹿児島の人間の一人としてずっと関わっていたいと思います。バスケットだけでなく、サッカーの鹿児島ユナイテッド、バレーボールのフラーゴラッド鹿児島も含めて、今ようやく鹿児島にも地域のエンターテイメントと呼べるようなプロスポーツが育ってきている。そういう存在が鹿児島にもあるということをいろんな人たちに伝えたいから、鹿児島のスポーツ新聞を作りたいという夢を持っている。

山崎 鹿児島県民のものなんですよね。だから今後のレブナイズは県民が考えていくことなんでしょうね。もちろん、私はオーナーであり、お金を使っている分、経営判断はしますが、ここまで来たらオーナー会社云々でどうなるものではないんですよ。来シーズンからのレブナイズは、オール鹿児島で戦うのか、戦わないのか、というのがとても重要になってくるんです。本当にオール鹿児島で行くのかどうかを、問題提起していかないといけないですよね。
「オール鹿児島」とは何か?
政 「オール鹿児島」という言葉は、とても分かりやすい。いろんな場で使われます。例えば今、県政の大きなテーマにも挙げられているサッカースタジアムや県体育館にしても「オール鹿児島で取り組む」と盛んに言われています。分かりやすい言葉であると同時に、とても分かりにくい。どうなることが「オール鹿児島」なのか。約160万人の県民がいれば、1人1人考えていることは違う。バスケットやスポーツに興味も、関心もない人が当然いる。そういったことも含めて「オール鹿児島」を実現するというのはどういうことなのか、こういう仕事をしているから余計にそう思うのですが、具体的に見えてこないのが悩みでした。
でも昨年、「鹿児島ダッシュキャンプ」に参加して、政治家や、鹿児島の企業のトップの人たちが一堂に会して、これからの鹿児島をどうしていくのかという真剣なセッションの舞台を目の当たりにしたとき、オール鹿児島を作るというのは、こういった取り組みを一つ一つ重ねながら、示していくことではないかと思ったところです。
山崎 オール鹿児島になる上で大切なことは「議論」と「非難」ではないでしょうか? レブナイズがきっかけで鹿児島と関わっていて、感じるのは、鹿児島って南日本新聞が少しでも何かを非難するような記事を書くと、ざわつきますよね? 逆に非難が少ないんでしょうね。匿名での非難はSNS上ではあるんでしょうが、実名、顕名で人や何かを直球で非難することはあまりないのではないでしょうか? 例えば、昨年の県知事選に出た米丸まき子さんが、ドルフィンポートでの県体育館について直球で非難するから逆に目立つんでしょうね。でも全国的なスタンダードで考えれば、何か意見が相対するような事象に対して非難の意見があるのは当たり前のことです。裏ではみんなそれらしいことを言っているのに、表に出てこないんですよね。

もし今のレブナイズについて「良くやった」という評価を鹿児島の皆さんにいただけるのなら、これからのレブナイズの進化は僕や、これからGMになる鮫島和人君とかが一人で背負っていくものではないと思うんです。これほどのミッションを彼一人に押し付けるのは酷な話。それでも例えば彼が背負うというのなら、彼の後ろに100人ぐらいが実名でついて守ってあげないといけないですよね。
鮫島 山崎オーナーの覚悟が言葉から伝わってきます。何か事を成そうと思えば、非難は絶対に大事なことです。かつてレブナイズの前身であるレノヴァ鹿児島を立ち上げた時は、ないこと、ないこと、ないことをネット上に書かれ、それは、それはすごかった。全然平気でしたけど。真っ向勝負で行くような議論をする。
その第1球を投げましょう! まずは「オンコートでリスペストされるバスケット」をしましょう! あらゆる頑張りがそこに結集され、正々堂々と戦う。その直球を鹿児島は受け止めて、どんどん、どんどん、渦を巻いていき、非難の先に「決断」する人間が絶対に出てきます。そういうオール鹿児島を求めるシーズンが来季になるのではないでしょうか? 議論、非難、決断、波風起こして未来に向けて、B変革に向かっていくと面白いものができあがっていくのではないでしょうか?

山崎 繰り返します。「レブナイズは誰のものか?」→「鹿児島県民のものである」と皆さんがいうのならば、県民としてのエンターテイメントですから「オール鹿児島」で作っていかなければいけない。県民のものであるとすれば、県民から票と所得を得ているのは、政治家と大企業です。県民のものならば、政治家と大企業の経営者はレブナイズのことを頑張らなければならないわけですよ。応援せざるを得ないものですよ。これを応援してもらえるようにするかどうかは、我々も頑張るけれども、県民も頑張らなければいけないのではないかと私は考えています。ここまでは運よくやれてきました。ここから先は、その議論もふまえ「誰が背負っていくのか?」ということです。(つづく)
