先日、高校野球元監督の塩瀬重輝氏が亡くなった。１９８６年夏には鹿児島商を率いて、全国ベスト４に導き、その年の国体で優勝し、鹿児島に初の「全国制覇」をもたらすなど、輝かしい実績を残した名将である。
幾多の名選手を輩出したことでも知られている。最も著名なのはプロ野球・中日の井上一樹監督だろう。加治木の出身であり、鹿商をはじめとする公立校の監督を歴任。80年夏には中種子を率いて初の県大会４強入りを果たした。その年は、徳之島も４強入りしたため、離島高校が２つも県ベスト４に入ったことが大きな話題となった。
筆者にとっても86年夏の鹿商の活躍は思い出深いものがある。ソフトボールも少年野球もやっていなかったが、小学生の頃から高校野球が好きで、鹿児島代表を応援していた。なかなか全国で勝てないことに忸怩たる思いがあった中で、「桜島打線」の看板を掲げた鹿商が全国の強豪をなぎ倒す姿に胸躍るものがあった。当時小６で「中学では野球部に入ろう！」と決意するきっかけになった。
「勝って爽やか、負けて悔いなし！ 球児の無心の戦い、あの大観衆の中でプレーできる選手は幸せであり、青春時代の財産である」と県高野連の１００周年記念誌「白球に魅せられて」で述べている。何度かお話したことがあるが、野球について語る姿はまさしく「勝って爽やか、負けて悔いなし」そのもの。高校野球に生涯の大半をささげた86年の人生だった。