屋久島、延長を制す!

【1回戦・松陽ー徳之島】6回裏松陽、先頭打者本塁打を放った5番・朝隈=鴨池市民
第107回全国高校野球選手権鹿児島大会第7日は7月11日、鹿児島市の平和リース、鴨池市民、両球場で1回戦4試合があった。屋久島は延長10回タイブレークを制し初戦突破。鹿屋農、シード樟南、松陽も接戦をモノにして2回戦に勝ち進んだ。第8日は12日、両球場で1回戦4試合がある。
◇11日の結果
・1回戦(平和リース) 鹿屋農 2―1 吹上 屋久島 4―3 鹿児島水産(延長10回)
・1回戦(鴨池市民) 樟南 6―4 隼人工 松陽 5―2 徳之島
◇12日の試合
・1回戦(平和リース) 9:00 種子島VS頴娃 11:30 鹿児島城西VSれいめい
・1回戦(鴨池市民) 9:00 加世田VS喜界 11:30 薩南工VS出水商

「これからの歴史に残る一戦」・隼人工

昨夏準優勝で第5シードの樟南と昨秋8強で21世紀枠の鹿児島県代表に選ばれた隼人工。下馬評は樟南有利と目されていたが、隼人工が終盤粘りを見せた。
序盤は樟南が圧倒的に優位に試合を進めていた。

先発の右腕エース・犬窪晴人(3年)=写真上=は横手投げから最速140キロ台の球威と、コーナーを丁寧に投げ分ける投球で3回まではパーフェクト。5回までを投げて1安打の好投だった。
打線は隼人工の好右腕・浅井聖(3年)を3回につかまえる。二死満塁から死球押出しで先制し、6番・赤城颯飛(2年)から3連続適時打を浴びせ、打者10人で5得点のビッグイニングを作った。4回にも1点を加え、序盤は樟南のコールドペースだった。
流が変わったのは6回からだった。犬窪から左腕・藤岡汰成(3年)にスイッチすると「左投手に対しては色々と仕込んでいたものがありました」(新開剛監督)隼人工が反撃に転じる。6回表二死二三塁。大きくリードした二走・山口敏行(3年)が二三塁間で挟まって引き付ける間に三走・中村威風(3年)が生還して1点を返した。

7回は代打・山内零王(3年)が右前適時打を放ち=写真上=、三振で好機が潰えたかと思いきや、振り逃げ一塁送球が悪送球となり3点目が入った。

8回は3番手・五反田流星(3年)のボールになるスライダーを見極めきれずに三者凡退だったが、9回に粘りを見せる。「低目の変化球は捨てろと指示した」と新開監督。「自分たちらしい打撃をすることだけを意識した」(小島蓮主将・3年)。3番・藏園悠真(2年)、5番・中村剛瑠(3年)が安打で好機を作り、6番・山下珀人(3年)、7番・中村がボールを見極めて四球を選び、押出しで2点差とした。なおも満塁と一打逆転の好機が続く。9番・藏薗遥人(3年)が初球を強振してファールした時「遥人の打球が外野の頭を抜けるイメージができていた」と新開監督。2球目、振り抜いた打球は左翼手へのライナーとなったが頭上を越えず、試合終了だった。 「少人数からのスタートだったけど、ここまで来ることができたのは3年生の絆のおかげ」と小島主将。新開監督は「3年生は2年4カ月やってきたことを全て出し切ってくれた。これからの隼人工の歴史に残る一戦だった」と賛辞を送っていた。
「らしくなさ」払拭できず!・徳之島(奄美新聞掲載)

徳之島は序盤の「らしくなさ」を払拭できず、無念の敗戦。「選手たちは最後まであきらめず戦ってくれた。負けたのは監督の責任」と地頭所眞人監督は敗因を背負った。
初回の守備。チームの柱である三塁手・白坂心之丞主将(3年)が3つの野選に絡み、先制点を与えてしまった。「3年生が引っ張らないといけないのに、自分が足を引っ張ってしまった」と白坂主将は悔やむ。2回の裏には同点に追いつき、5回は白坂主将の適時打=写真上=で勝ち越しに成功した。勢いに乗って追加点を重ねたいところだったが、6回表に5番・朝隈祐太(3年)の本塁打ですぐさま同点に追いつかれる。
「あれで流れを持っていかれてしまった」(地頭所監督)。本来なら粘り強く、多彩な攻めを繰り広げられる力のある打線が、淡白な「らしくない」攻撃が続く。エース作田和洸(3年)が好投していただけに「和洸を助けられなかった」(白坂主将)のも悔やまれた。
9回表は守備のミスをきっかけに3失点。その裏、後がなくなってようやく本来の「らしさ」を思い出し、大逆転劇の予感を漂わせた。二死二三塁で4番・白坂主将の打席。「5番の長尾(涼・2年)につなげば何とかしてくれる」と「つなぐ打撃」のみを心掛けたが、最後の打球が右翼手の頭上を越えず、グラブに収まった。 「自分たちも成長できた部分もあっただけに、勝てなくて悔しい」と白坂主将は目頭を潤ませる。力を発揮できずに敗れることも、高校野球では往々にしてある。悔しさは次のステージで花開くためのエネルギーにするだけだ。
「最高の投球はできた」が…
徳之島・作田和洸投手(熱球譜・奄美新聞掲載)

5月の県選抜大会の頃とは見違えるような好投ぶりだった。投打に大車輪の活躍で、チームを引っ張った。県選抜大会の鹿児島城西戦も先発だったが、四死球を連発し、守備のリズムを作れなかった。決して制球の悪い投手ではないが「県大会の舞台では緊張して力んでしまう」のが課題だった。
夏の大会までは「テンポ良く投げる」ことと「直球の質を上げる」ことを意識して練習に取り組んだ。野手がリズムを作りやすいようにストライク先行の投球を心掛ける。チーム内の紅白戦では直球だけを投げて勝負することで質を磨いた。その成果を松陽戦では存分に発揮できて、守備のリズムを作ることができた。

六回表、先頭打者に本塁打を浴び、動揺して3つの四死球を連発したが、「伝令でやってきた紀乃が笑わせてくれたので、次の打者に集中できた」と中飛に打ち取ってそれ以上の追加点を許さなかった。七回も二死から四球を与えたが、最後は本塁打を打たれた5番・朝隈に2ボール2ストライクから外角低めの見事な直球、見逃し三振で前の打席の雪辱を晴らした。
「3年間で一番良いボール」を投げたのが最後にマウンドになり、2年生の長尾に後を託した。最後の最後まで逆転を信じて戦ったが、願いは叶わず。「3年間、徳高野球部にいて本当に良かった」と思えた投球ができただけに、「勝ちたかった」と悔しさの涙を止めることができなかった。