
毎年恒例の「今年の漢字」が発表された。2025年の世相を表す一文字は「熊」。連日ニュースなどで大きく取り上げられて、大変さは想像に難くないが、南九州に住んでいて今のところ熊に襲われる心配はないので、どこか「対岸の火事」のようにも思えてしまう◆とはいえ鹿児島でも猿やイノシシ、鹿などの野生動物を山中で見かける頻度が高まり、街中に現れて騒ぎになったこともあった。自然環境だけでなく、政治、経済情勢なども大きく変化し、今までの「当たり前」が通用しなくなりつつあると考えると、この一文字が現在の世相の一端を物語っているのは間違いない◆自身にとっての一文字は何かを考えるのも、毎年恒例である。今年は8月に妻が他界するという大きな出来事があった。「喪」「失」「癌」「病」など、ネガティブな文字が頭に浮かぶ。そんな1年であったことは間違いないが、今年をそんなネガティブな文字でとらえるのには抵抗がある。いろいろ考えて「練」と選んでみた。試練の「練」、もしくは鍛錬の「錬」。人生で3本指に入る喪失体験をして、日々試練、鍛錬の毎日だった◆年の瀬が迫ってくると、「今年の墓碑銘」のようなコーナーを耳目にするようになり、亡き人のことに想いを馳せるのは人の性だろう。旅立っていった人たちから託されたものを想い、これからを生きる人たちのために、自分に何ができ、何をすべきなのか。そんなことを例年以上に考える年末にしたいと思う。
