鹿児島のバスケットと未来を語る
鮫島俊秀(鹿児島県バスケットボール協会会長)✕山崎俊(鹿児島レブナイズオーナー)

プロバスケットボールチーム・鹿児島レブナイズは2024―25年シーズン、8年ぶりとなるB2リーグを戦った。当初の予想を大きく上回り、レブナイズは西地区2位でB1昇格のプレーオフ(PO)に進出。POでは準々決勝で東地区3位の信州ブレーブウオーリアーズに敗れ、B1昇格は果たせなかったが、かつてないほど多くの注目を浴びた。
「鹿児島のセンターピンになる」とオーナーの山崎氏が掲げ、株式会社Wizがオーナーとなって4年目、オンコートでのバスケットが多くの人を魅了しただけでなく、「スポーツエンターテイメント」としてのレブナイズが、鹿児島の経済活性化の起爆剤になりうる可能性を具体的に示したシーズンでもあった。
また県協会としても、8年前、ヘッドコーチ(HC)としてレブナイズを率いていた鮫島氏が24年から会長に就任。国民スポーツ大会の成年男子の主力となる「レッドモンスターズ」(RM)がレブナイズの下部組織として本格的に始動し、ウインターカップやサミットなどの県協会主催行事にもWizが積極的な協力体制を築いていきながら、「鹿児島のバスケット」を日本一に導いていこうとする新たな取り組みが始まっている。
今回は「スポーツかごんまNEWS」編集長の政純一郎がコーディネーターとなり、鮫島氏、山崎氏とのスペシャル対談をYouTube動画「Wizチャンネル」の「UZUチャンネル」特別編として企画した。これからの鹿児島のバスケットと未来を語りあった熱い対談の模様を再現する。

イラスト ぽたろ
24ー25シーズンを振り返って

山崎 まずは鮫島先生、誕生日おめでとうございます!(※対談当日の6月2日が鮫島氏の誕生日)
鮫島 ありがとうございます。70歳を過ぎたら、誕生日はめでたくないです(笑)。100の拍手より、1つのクラフトビールがありがたい!
政 まずは24―25年シーズンが終わりました。山崎さんとしては今季を振り返っていかがですか?
山崎 シーズン前に鮫島さんと今季のB2の展望ということで対談し、渦チャンネルの動画で流しました。あの時、どんな心境だったのかなぁ~。(※対談の模様はこちら!)
チームの布陣が決まり、今季の目標をどうしようかと考えて「西地区優勝」を掲げました。どこまで行けるか分からなかったけれど、志高く「西地区優勝」と掲げていたことを覚えています。開幕戦がホームで福岡、次もホームで福井、その次がアウエーで静岡という対戦カードでした。私は編成にも携わっていたので、自分たちがオファーを出したくても出せない金額の選手が対戦相手に何人かいたのも把握していました。開幕からの連敗が続いたら、どうなるのかなという恐怖心はありました。それでも鮫島さんはあの対談の時「大丈夫ですよ」という話をしていました。
鮫島 山崎オーナーも、あるいは今のBリーグに関わっている人も、どうしても選手を「個」で見てしまっている。私たちコーチ畑を歩んできた人間は「チーム」でどう進化するかという見方をします。

2年目となったフェルナンド・カレロ・ヒルHC流のバスケットに加えて、レブナイズにはアンソニー・ゲインズ・ジュニア(AJ)=写真=という選手がいる。身体能力の高さは皆さんがご存じの通りですが、チームの精神的なバックボーンでもある。だから「大丈夫」と言ったのです。ただしPOは別物とも話しました。その点では「サメジイ予想」はだいたい当たっていたのかなと思うところです(笑)。チームの掲げた「鹿児島ショータイム」を具現してくれたことは、県協会としても大変ありがたいことでした。
政 Bリーグ最高身長の221cmのマット・ハームス選手と、最少身長の166cmの兒玉貴通選手がいる。この辺りも分かりやすく視覚的に面白いと思いました。
山崎 良かったですよね。人間性も良く、情熱的で、熱くて、本当に良い選手でした。

政 これまでレブナイズはどうしてもサイズ的に小さいところを、スピードや運動量、チームバスケットでカバーする印象が強かったですが、マットがいることで、高さで「アドバンテージ」があるというのを初めて経験したように思いました。
レブナイズのバスケットは「面白い!」
政 かつてレブナイズは西原商会アリーナでも1000人集めることもなかなかできずに、集客に四苦八苦していた時代を知っています。今では3000人を超えることが珍しくなくなった。PO当日、朝、たまたまランニングをしていたら、13時開始の試合を見るために、8時過ぎから並んで場所取りをしている人がいる。それも1人、2人でなくて、100人近い人が次々に集まっていた。まるで人気アーティストのコンサートのような光景が、レブナイズのバスケットでも見られるようになったことに、レブナイズがそういう存在になりつつあるのを感じました。オンコートの戦績以外の「興行」的な面の感想はいかがですか?
山崎 シンプルにレブナイズのバスケットは「面白い」ですよね。ショービジネス、エンターテイメントとして優れている。僕も一ファンとして試合を見ていますが、お金を払って見たいと思う価値のある面白さだと感じています。そのように仕上げてくれているHCや選手、チームスタッフ、それを盛り上げてくださっているブースターの皆様、スポンサーの皆様に、オーナーとして本当に感謝しています。

政 個人的に思うのは「Rebsグッズ」ですね。今まで「プロスポーツチームのグッズ」といえば、試合に着ていくのはありだけどもプライベートではなかなか着こなせないものが多いイメージでしたが、ベースボールシャツや、冬のパーカーなど、「普段着」として着たいと思う。この辺もこれまでのプロチームにない発想を感じました。
山崎 そういっていただけるのはとても嬉しいです。この現状に満足せず、そういった試みはもっともっとやっていきたいです。
政 濱田酒造さんとコラボした「AJボール」、桷志田さんとコラボした「クラフトビール」の発売など、レブナイズが「センターピン」となって鹿児島の経済が活性化する起爆剤になるとは具体的にこういうことだという例を示してくれたと思いました。

山崎 やっとそういうことができ始めてきたというところです。ここからもっとスケールアップし、もっともっと鹿児島を盛り上げていく、センターピンになれる活動を来季、またその次のシーズンと続けていけたらと考えています。
政 「鹿児島ダッシュキャンプ」を開催されたのも大きかった。全国、鹿児島を問わずに活躍している起業家、国会議員、県議会議員、財界人…多くの人たちが一堂に会する場を設けて、鹿児島の経済を盛り上げていこうという機運を複数回に渡って作られました。
山崎 ダッシュキャンプは4月の前回までに4回やりましたが、良かったですね。鹿児島の経営者の皆様が集まる場であり、東京を中心にビジネスで成功されている方が鹿児島に来て、お話をする機会を作っています。ああいう方々が、私と同じように鹿児島の「良さ」を知り、「鹿児島でビジネスをやってみよう」「鹿児島の企業と協業しよう」など、そういったものがどんどん進んできています。ダッシュキャンプにはすごく意味があると思っています。

政 広く鹿児島のバスケットという視点で見た時、今季のレブナイズをどうご覧になっていましたか?
鮫島 協会会長としていえることは、一つの鹿児島のバスケットチームが社会現象を起こすまでのことをやってくれた。それに最大のリスペクトをしているということに、尽きます。(つづく)

山崎俊(株式会社Wiz代表取締役 CEO、鹿児島レブナイズオーナー)