驚異の大会新!
男子四継・39秒77・BabbinoCompare、27年ぶりの更新
ジュニアA百10秒33・安田(明桜館高)高2歴代9位


第80回鹿児島県陸上選手権大会第2日は7月12日、鹿児島市の白波スタジアムであった。男子四百リレーではBabbinoCompare=写真上=が39秒77、27年ぶりとなる大会新記録を樹立した。男子ジュニアA百では安田夢雄生(明桜館高)=写真下=が高2歴代9位に相当する10秒33の好タイムを叩き出した。最終日は13日、同会場である。
※記録の詳細はこの文字をクリック!

歴史を塗り替える!
BC

男子四百リレー ①BabbinoCompare(川原、東畠、永里、横田)=大会新
男子四継決勝では鹿児島の陸上界を揺るがす大記録が生まれた。BabbinoCompareが39秒77。27年前、城山観光が出した40秒05を上回り、40秒を切るスプリントチームが久々に鹿児島に誕生した。
BabbinoCompare(BC)。カタカナでは「バッビーノ・コンパーレ」と読む社会人陸上チームが薩摩川内市を拠点に活動しているのは知っていたが、まさかこんな大記録が、県選手権で出るとは全く予想していなかった。レースの流れを追うこともなく、機械的にレースを観戦し、カメラでフィニッシュシーンを抑えていただけだったから、記録を聞いてひっくり返りそうになった。
一走・川原和也、二走・東畠幸、三走・永里慶太、アンカー・横田幹太。川原、東畠は川薩清修館高の出身。これまで名前を目にしたことはあったが、何かで優勝して取材した記憶はない。最年少・21歳の永里に至っては「短距離を始めたのは1年半前。中高では中長距離の選手だった」と言う。前回の大会記録が27年前だと告げると「僕はまだ生まれていませんでした」と25歳のアンカー横田は笑う。出身は愛知県だが現在、鹿屋体大の博士課程で「走りを科学する」研究をしている。
東京在住の川原は会社員として働きつつ、母校の日本大のグラウンドで練習している。東畠は薩摩川内市の消防署員。永里は霧島市でIT関係の仕事をしている。日頃から寝食を共にして走力とバトンパスを磨いているわけではない4人が打ち出した記録と思えば、余計に驚きは増した。
「他の3人はどうか分かりませんが、僕はこのぐらいの記録は出せると思っていました」と横田は言う。川原は10秒58、東畠は10秒53、永里と横田は10秒59、10秒5台のスプリンターがそろっており、「走りの科学者」である横田が持つデータから導き出した結論だった。川原は「百で決勝に残れず、個人のレースは散々だった」が「四継でこの記録が出せてホッとした。今28歳だけど、まだまだ記録は伸ばせると自信になった。鹿児島に帰ってくる口実ができた」と喜ぶ。「大人になっても記録が伸ばせることを示せて良かった」とは27歳の東畠も同じ想いだった。永里は「自分を誘ってくれた東畠さんに恩返しするつもりで走った」と言う。
「この記録なら来年の日本選手権も夢じゃない」と横田。この4人で公式の大会で実際にバトンをつないだのは今大会の予選と決勝の2本だけ。39秒77は、いわばこのチームの「出発点」である。「これからは自分たちの記録がどこまで伸ばせるか、楽しみです」と横田は自分たちに期待していた。
「リラックスして走れた」
安田
男子ジュニアA百 ①安田夢雄生(明桜館高)10秒33 ②井上結太郎(鹿児島中央高)10秒52=以上大会新
6月の南九州を29年ぶりの大会記録で制した安田がまた一つグレードアップした。10秒33は今季の高校ランキングの3位、高2の歴代9位に相当する。まさしく昇龍のような成長ぶりを見せている。
「リラックスして走れました」と振り返る。得意のスタートダッシュから加速、中間走、フィニッシュまで力みなく、楽に走れた。風は+1・3m。風向きを考慮してバックストレートでのレースとした大会本部の隠れたアシストも称えるべきだろう。南九州から今大会までの間に「腕振りの感覚をつかめた」と言う。リラックスして、力まずに振れているが、力強い。一見真逆のベクトルの感覚をつかんだことが南九州の10秒50より0・17記録を縮める原動力になった。
これで8月のインターハイでは俄然注目を集めることになるが「そんなに簡単なものじゃない」ことは熟知している。暑さはより厳しくなり、全国の猛者が本気で向かってくるインターハイの舞台でも、この日のようにリラックスして走れるか。「今の自分の良い所をさらに磨いて、インターハイに挑みたい」と意気込みを語っていた。
今大会は「中間試験」
小田
男子百 ①宮下峻(大東文化大)10秒27 ②田平海心(鹿児島国際大)10秒52 ③東畠幸(BC)10秒53 ④小田槇太朗(東京大)10秒62

懐かしい顔だった。大学生になった小田の走りを鴨池でまた見られたのには感慨深いものがあった。
ラ・サール高2の頃、鹿児島であった南九州で優勝。インターハイにも出場し、高3ではどんな成長を見せてくれるか楽しみにしていたが、県総体予選前のアップで肉離れ。インターハイ路線のレースには全く参加できなかった。
「自分の中で全く想定していなかった出来事」であり、当然ショックもあったが、そんな経験を「挫折」ととらえず「楽しかった」と言ってのけるメンタリティーが小田にはある。インターハイ路線を走れなかったからこそ、悔しさをエネルギーに替えて、ケガを治し、受験に集中し、見事東大に合格して、再びスプリンターとして己を磨く日々が戻ってきた。
鹿児島に帰ってくるのは、卒業以来約4カ月ぶり。特に懐かしさを感じることはないが、1年前、走れなかった鴨池で思い切り走れたのは嬉しかった。タイム10秒62は登り調子だった高2の頃と変わらない。自分の現在地を確かめられた意味でもこのレースは「中間試験のようなもの」だった。
大学では何を目指すのか? 「今の自分の実力では日本一を目指すとはとてもいえない。まずは東大記録の10秒43を塗り替えることを目指す」と言う。そこから関東インカレ、全日本インカレ、日本選手権、ステップアップしていく未来を描いていた。
塗木3姉妹、そろい踏み!
女子百 ①塗木ひかる(鹿児島大)11秒91 ②井上南(Pi'sTC)12秒06 ③石本桜子(鹿屋体大)12秒14 ④森山心月(鹿児島中央高) 12秒50 ⑤塗木さくら(鹿児島大) 12秒55
女子百は塗木ひかるが11秒91で優勝。自己ベスト11秒90に次ぐ好タイムだが「初めて妹と一緒に県選の決勝を走ったんですよ」と自分の記録よりも、妹と一緒に決勝を走れたことを喜んでいた。
2つ下の妹・さくらは大学2年から競技を再開した直後に膝をケガして、なかなか思うように走れなかった。ようやく復調し、この日出した12秒55は「高校生の頃に出した自己ベスト12秒57」を上回ることができた。「ずっと姉の背中を追いかけてきた」さくらだったが「ようやく私と決勝を走れるぐらいの力がついた」ことをひかるは喜んでいた。
この日はジュニアA百に出場していた三女・淳菜が追い風参考(+2・1m)だったが12秒15と大会記録に相当する好タイムで優勝した。「ポテンシャルは多分、三女があると思いますよ」とひかる。ますます楽しみな塗木3姉妹である。
大会2日目、フォトグラフ&コメント集

女子四百 ①下野みのり(BC)55秒69
下野(2年ぶり4回目の優勝で思わずガッツポーズ)「55秒台の記録を出したのは高校の時以来。社会人になってなかなか練習時間が取れない中で、今年から所属が代わって指導者の方の指導が合っていたおかげ。県選手権での優勝を目標にしていたのでうれしい」

女子ジュニア千五百 ①ムリティ・マーシー(神村学園高)4分23秒93 ②荒木美伊奈(鹿児島高) 4分27秒31=以上大会新
荒木「マーシーさんについていくように監督から言われていた。最後までついていくことはできなかったけれど、これまでのベストが4分40秒だったので、おかげで自己ベストを出すことができた。今度はマーシーさんに勝ちたい!」

女子走高跳 ①鐵丸美由紀(鹿児島銀行)1m69

男子四百 ①大津屋省吾(HRC)48秒72

男子四百障害 ①平田和(早稲田大) 51秒37 ②上和田樹(広島大) 51秒60

女子四百リレー ①鹿児島南高(三宅、下田、西園、大塩)47秒72 ②松陽高48秒10 ③鹿児島大48秒22