樟南、試合巧者ぶり発揮 れいめいは北薩対決制し6年ぶり4強へ

【準々決勝・鹿屋中央ー樟南】2番手で好投した樟南・五反田(右)

【準々決勝・れいめいー出水工】先制2ランを放ったれいめい・谷口
第107回全国高校野球選手権鹿児島大会第16日は7月22日、鹿児島市の平和リース球場で準々決勝2試合があった。樟南は後半試合巧者ぶりを発揮して、鹿屋中央を8-3で下した。れいめいは出水工との北薩地区同士の対戦にコールド勝ちし、6年ぶりの夏4強入りを決めた。23日は休養日。第17日は24日、同球場で準決勝2試合がある。
◇22日の結果
・準々決勝(平和リース) れいめい 8-1 出水工(7回コールド) 樟南 8-3 鹿屋中央
◇24日の試合
・準々決勝(平和リース) 9:00 神村学園VS樟南 11:30 れいめいVS鹿児島実

試合巧者ぶりを随所に発揮・樟南

樟南の右腕・犬窪晴人=写真上=、鹿屋中央の左腕・溝淵爽=写真下=。今大会を代表する屈指の3年生左右両腕の出来が勝敗のポイントになると予想した一戦だったが、勝敗を分けたのは勝負所でのバントの精度と、2番手投手の力量の差だった。

5回までは樟南がペースを握る。2回に8番・犬窪が自らのバットで先制点を叩き出し、犠飛で2点を先取した。流れが大きく変わったのがグラウンド整備直後の6回表。鹿屋中央は8番・松元裕樹(3年)、1番・君島虎太郎(3年)が粘り強く打って、一死一三塁。この試合で初めて三塁まで走者を進めると、3番・秋田心(3年)が会心の走者一掃中越え三塁打で逆転に成功した。

5回まで好投を続けていた犬窪は足がつり、背番号10の2番手・五反田流星(3年)が後を引き継ぐ。鹿屋中央は二死一三塁から重盗を仕掛けたが、樟南が見事な連係プレーでこれを刺し、流れを断ち切ると、6回裏に7番・篠原流依(3年)の右越え二塁打で同点。7回は相手のバント処理ミスで勝ち越し、4番・迫山寛汰(3年)の左前2点適時打で更に畳みかけ、8回にも2点を加えた。リリーフした五反田が6回以降は無得点で切り抜け、樟南が4強入りを果たした。

大きな勝敗の分かれ目は7回、一二塁の場面で送りバントの成否にあったとみる。表の鹿屋中央は一死一二塁で送りバントを仕掛けたが失敗。その裏の樟南は無死一二塁から3番・塚原隼成(3年)がいとも簡単に送りバントを決め、走者を進めた上に、相手のバント処理ミスで勝ち越し点まで手に入れ、4番・迫山の適時打につなげた。「緊張しました」と塚原。「送るだけでいいから」と山之口和也監督に言われたが、明らかに送りバントのシチュエーションで、決め切るのは言うほど簡単ではない。それでも塚原は「自分は目立つ打者じゃない。バントの練習はこだわってやってきた」成果を大一番でみせた。8回にも同じように一死一二塁の場面で、今度はセーフティー気味に一塁方向に送りバントを決めて=写真上=、追加点につなげている。
樟南の各打者が「溝淵対策」で打者席のホームベース側ギリギリのところに立ち位置を工夫していたのも、隠れた好プレーだった。左腕・溝淵は右打者の膝元に落ちるスライダーを武器にしている。これを封じるために「内角球が来たら肩を入れて投げにくくさせようと打者同士で話をしていた」(塚原)。2回の先制点、6回の同点、7回の勝ち越し点はいずれも右打者の死球がきっかけだった。

2番手・五反田=写真上=は最速140キロ超の直球が武器。これにタイミングを外すスライダーを織り交ぜた緩急を持ち味としている。スライダーが切れすぎてワンバウンドし、暴投になることも多く、本来は背番号1を背負うほどの実力者だったが、今大会は10番に甘んじた。その悔しさをぶつけ大一番をモノにする原動力となった。「ようやく自分らしい持ち味を出せるようになった」(山之口監督)。 2年連続の決勝進出をかけ、昨夏決勝で相まみえた王者・神村学園に挑む。「相手云々よりも、まずは自分たちの野球をしっかりやること」を山之口監督はポイントに挙げる。昨夏決勝もスタメンで出場し、敗れた悔しさを味わっている塚原は「神村学園の連勝を止めるのは自分たちという意気込みでぶつかっていく」と燃えていた。
奄美出身の赤木名コンビ、「つなぐ野球」を体現
れいめいの碇山と濱田(熱球譜・奄美新聞掲載)

「幼稚園の頃からの親友」という奄美大島の赤木名中出身の4番・碇山和尚(3年)=写真左=と5番・濱田勇人(3年)=写真右=。れいめいの中軸を形成する「赤木名コンビ」が、チームの掲げる「低く、強い打球でつなぐ野球」(湯田太監督)を随所に表現し、勝利の原動力となった。

初回、3番・谷口知希(3年)がバックスクリーンに特大2ランを放って先制。長打が出た後は「自分も続こう!」と力んで大振りになることがあるが、碇山は「自分もかつてそういうことがあったのを反省し、自分らしい打撃を心掛けた」と中前打で続いた=写真上=。濱田も右打ち。二直で追加点は奪えなかったが、この「つなぐ姿勢」が3回の大量点の布石になる。

3回表一死一二塁の得点機。碇山は「走者を返すか、打てなくても塁を進める」打撃を心掛けて右飛。二走を三塁に進めた。「初球を狙っていた」濱田は「張っていた直球ではなかたが、高めに浮いた変化球」を逃さず左前に弾き返した=写真上=。チームのお手本のような打球に触発されたように、6番・矢野航成(3年)、7番・平野蒼斗(3年)、8番・和田夏葵(3年)も単打でつなぎ、4連続適時打4得点で試合の主導権を握った。
小学校から一緒に野球を始めた2人。同郷の先輩がれいめいで野球をやっていたこともあり「高校はれいめいで野球をやろう!」と2人で決めていた。「2人とも野球大好き。覚悟を持って島から出てきて、雰囲気を持っている」と湯田監督は言う。準決勝では強豪・鹿児島実に挑む。濱田は「勝負を楽しみたい」と抱負。相手には大野純之介(3年)、髙野陽太(3年)、同じ奄美の朝日中出身の2人がいる。「島に帰った時は連絡を取り合って一緒に遊んでいる」仲の2人と、決勝進出をかけて真剣勝負できるのも「楽しみです」(碇山)。