楠田(鹿女子)が4冠達成!
平松(鹿児島)は3冠



2005年度鹿児島県高校総体陸上最終日は5月23日、鹿児島市の白波スタジアムであった。楠田ゆうな(鹿児島女)=写真上=は女子百障害を14秒19の大会タイ記録で優勝。女子千六百リレーも鹿児島女が制し、四百障害、四百リレーと合わせて4冠を達成した。男子百十障害は平松希叶(鹿児島)=写真中=が制し、こちらも四百障害、千六百リレーと合わせて3冠だった。男子三千障害は伸び盛りの2年生・平翔生(鹿児島城西)=写真下=が9分23秒89で初優勝だった。学校対抗は男子・鹿児島南が10連覇(コロナ禍中止の第73回大会を挟んで)、女子・鹿児島が5連覇だった。 各種目6位(※女子七種は4位)までが南九州大会(6月12―15日・熊本)に出場する。
※成績の詳細は下記リンクより
https://gold.jaic.org/jaic/member/kagosima/2025/result/kosotai/kyougi.html
満身創痍の末に感じた「無限の可能性」・鹿児島女

女子千六百リレー ①鹿児島女(倉野、吉屋、濵田、楠田)3分52秒77
「満身創痍」という言葉は、今大会の鹿児島女を端的に物語る。
大会2日目、女子四継決勝のゴール直前で2年生のアンカー中山綾音が左のハムストリングスを故障。初日に走幅跳で4位、2日目は百の予選、準決勝、決勝の3本を走って優勝…気持ちの高ぶりと身体の疲労のアンバランスがもたらしたアクシデントだった。吉屋優希乃は最終日一発目の百障害予選でハードルにぶつかって転倒。左足を負傷した。二百の決勝は何とか走り切って6位入賞したが、レース後医務室に運ばれた。
最終種目のマイルリレー。本来なら中山も、吉屋もメンバーで走る予定だったが、「本職」の走高跳を断腸の想いで棄権した中山を走らせることはできない。大坪緑監督は吉屋にもメンバー交代を打診したが「最後の県総体だから絶対に最後まで走りたい」と譲らなかった。三走の濵田彩華とは3年間、四継、マイルを走り続けた。「2人でバトンをつなぎたい」想いが強かった。

マイル決勝の一走は倉野樹里。欠場した中山に代わってメンバー入りした1年生だった。「本職」の四百では準決勝敗退で「チームに貢献できなかった悔しさをリレーにぶつけた」。3位でバトンを3年生・吉屋につなぐ。執念の走りで1人かわして2位で濵田へ。「ケガをした選手の分は元気な私がカバーする」意気込みで首位を走る鹿児島中央にプレッシャーをかける。
鹿女子全員の想いの詰まったバトンを最後に託されたのは2年生・楠田ゆうな。四百障害、四継、百障害と3冠を達成した実力者も「まさかアンカーとは思ってなくて不安だった」がやるしかないと覚悟を決めた。「中山の気持ちも背負って自分が走る」。高ぶる気持ちと真逆に走りは冷静だった。第2コーナーから直線に出たところで前をいく選手を抜きかけたが、無理せず自重。しばらく並走し、ラスト150m付近でもう一度ギアを上げて抜き去って、チームメートの待つ歓喜ゴールにトップで駆け込んだ。
大坪監督にとっては「己の無力さ」を痛感した4日間だったという。将来を考えて無理をさせたくなくても、当人が強い意志を示した時、指導者はどう応えるべきか? 強権を発動してでもやめさせるか、意志を尊重するか…どちらが正解はおそらく今後もないだろう。ただ一つ分かったことは「この子たちには無限の可能性がある」。優勝タイムは3分52秒77。満身創痍な状態で、チームベストを5秒以上縮めた教え子たちをリスペクトする気持ちだった。
「思い通りのレース」平(鹿児島城西、和泊中卒)
「優勝じゃなければ意味がない」孝志煌(指宿商、喜界中卒)・奄美新聞掲載

男子三千障害 ①平翔生(鹿児島城西)9分23秒89 ②坪山雄哉(同)9分29秒77 ③孝志煌太(指宿商)9分31秒83
優勝した2年生・平翔生にとっては「思い通りに走れた」と会心のレース。一方、3位に終わった3年生・孝志煌太は「優勝じゃなければ意味がない」。奄美出身の2人には明暗の分かれた男子三千障害決勝のレースだった。
平は三千障害のレース自体が県記録会、地区大会に続いて3回目だった。和泊中時代はサッカー部員だったが、高校では「走るのが好きで、極めてみたいと思って」名門・鹿城西に進学。「花形」である五千や千五百には先輩の前田や同学年の中島という強力なライバルがいる。 出場機会を求めて、この5月から三千障害に転向を決意。走るだけでなくハードルや水濠を越える技術が要求されるが「楽しい」と感じた。
決勝レースは序盤から2、3番手をキープしつつ、残り2周で仕掛けるレースプランを描いていた。チームメートの坪山が先に出たが慌てずについていき、ラスト300mでスパートをかけ、初の県総体優勝を勝ち取った。
孝志煌は双子の兄・瑛太やチームメートに「絶対優勝する」と宣言してレースに臨んだ。1000m付近から「ペースが遅い」と感じて前に出ようとしたが、ためらった分、乗り切れなかった。「南九州では絶対優勝する」と雪辱を誓う。熱いレースが約2週間後に熊本である南九州大会でも期待できそうだ。
「苦しかったけど、楽しかった」平松

男子千六百リレー ①鹿児島(橋元、堀之内、池田、平松)3分16秒13 ②吹上3分17秒13 ③鹿児島中央3分17秒31
平松希叶は四百障害で全国ランキングトップクラス。今大会注目の選手の一人だったが、4月から5月にかけて呼吸困難や肺炎を患い、ほとんど練習ができていなかった。病が癒えて、大会に向けてようやく練習ができるようになったのは大会1週間前。「まだ2、30点の仕上がり」でしかなく、記録を狙うには程遠い状態だったが四百障害、百十障害、マイルリレーと3冠を達成し、潜在力を見せた。
2日目、最も得意な四百障害ではチームメートで後輩の橋元翔琉に9台目まで先行されるまさかの展開だったが「練習ではいつも外側のレーンで先に行かれていた。最後は負けたくない意地が出た」とラストスパートで競り勝った。百十障害も橋元と競ったが先輩の意地がやはり勝った。2年生の新納源大も3位入賞し、表彰台を鹿児島勢で独占し、気持ちも乗って最終種目のマイルリレーに挑んだ。
橋元、堀之内、池田、3人の2年生がつないで、トップでアンカー・平松に渡る。「後輩3人がトップでつないでくれたから、気持ちが入った。最後は苦しかったけど楽しかった」と首位を譲らず、トップでゴールを駆け抜けて「責任」を果たした。
どの種目も最低限の出場権はつかんだ。これからは「インターハイをベストな状態」で迎えられるよう、南九州、インターハイと調子を上げていくのみである。

女子三千 ①ムトニ・マーガレット(神村学園)9分01秒67 ②瀬戸口凜(同)9分14秒40 ④武田星莉(神村学園)9分52秒12 ④手島凛花(鹿児島女)9分54秒17
奄美出身の2人がし烈な3位争い
武田星莉(神村学園・沖永良部出身)と手島凛花(鹿児島女・朝日中卒)・奄美新聞掲載

女子三千はマーガレットと瀬戸口、神村学園の両エースが序盤から抜け出してハイレベルな優勝争いを繰り広げた一方で、3位争いは奄美出身の2人による劇的な展開があった。
当初は3年生・手島が果敢に上位2人に食らいついていた。前半は2人の後についていたが、1000m付近から徐々に差が開いていく。「1周70秒のペースは練習でやっていたが、本番はついていけなかった」と手島。前との差が開く一方で、逆に4番手争いをしていた後続との差がジリジリと詰まってくる。
県総体デビューの1年生・武田は鹿児島の選手と4番手争いをしていた。「表彰台は特に意識せず、一つ一つ順位を上げていくことだけを考えていた」。ラスト300mで4番手を確保する。その先を走る手島との差も、だいぶ縮まっているのが分かって更にギアが上がった。「まさかあそこで抜かれるとは思わなかった」と手島。かわされたのはラスト100mを切った直線コース上だった。
「きょうは勝負ができたので、次の南九州では記録を狙っていきたい」と武田。手島にとってはインタハイ出場のラストチャンスになる。昨年は南九州7位とあと一歩で出場を逃した。「まだまだ調子を上げ切れていない。南九州はベストの状態を作って走りたい」と3年生の意地をみせるつもりだ。

男子二百 ①山田蒼士(加治木)21秒75 ②安田夢雄生(明桜館)21秒90 ③王向文(鹿児島中央)22秒11
山田(百の雪辱を果たす)「得意種目の二百だけは安田に負けるわけにはいかなかった。調子は万全でなかったが経験で勝てた。今季は3年生になって学業が忙しく、追い込んだ練習ができていなかった。今年が最後の勝負なので、インターハイでベストな走りができるようにこれから調整していく。学業を言い訳にしない。加治木の選手でも勝てることを示したい」

男子砲丸投 ①今別府昇(鹿児島南)13m65

女子二百 ①花木美優(松陽)25秒50

女子八百 ①髙木愛悠奈(神村学園)2分14秒09 ②重森瞳(鹿児島)2分14秒47 ③中村美璃椰(出水中央)2分15秒61

女子百障害 ①楠田ゆうな(鹿児島女)14秒19=大会タイ

男子三段跳 ①木浦覇琥(鹿児島南)14m89