3連覇を目指す神村学園
連勝を阻むのはどのチームか?

第107回全国高校野球鹿児島大会の組み合わせ抽選会が6月21日、鹿児島市の鶴丸高校文化館であった。夏の甲子園を目指す出場74校63チームの組み合わせが決まった。大会は7月5日、鹿児島市の平和リース球場で開会式があり、同球場と鴨池市民、両球場で熱戦が繰り広げられる(※決勝戦は26日の予定、雨天順延)。優勝チームが全国大会(8月5日―・阪神甲子園球場)に出場する。開会式の選手宣誓は川内の東大晴主将(3年)が務める。今大会から暑さ対策のため、1球場の開催試合数は2試合となった。例年、大会期間中に梅雨明けすることが多い鹿児島だが、今年は開幕前に梅雨明けしそうな雰囲気。例年以上に暑さ対策やコンディション作りが、勝敗の大きなカギになりそう。
この1年間の県大会の戦績に基づく獲得ポイントで神村学園、鹿児島実、出水中央、鹿屋中央、樟南、鹿児島城西、鹿児島工、加治木の順に8チームがシードとなった。残りチームで抽選を実施し、初戦の対戦カードが決まった。
3連覇を目指し、県大会40連勝中の神村学園が優勝候補の大本命。これを阻む一番手に挙げられるのは伝統校・鹿児島実、昨夏準優勝メンバーを主力に擁する樟南、鹿屋中央や鹿児島城西などのシード勢か。シードの鹿児島城西とれいめいが初戦で対戦するなど、1回戦から見逃せない対戦が目白押しである。組み合わせ表を4つのパートに分けて、展望を述べる。

【神村学園―加治木パート】本命・神村に死角なし?

3連覇を目指す第1シード神村学園が頭一つ抜けている。打線は今岡拓夢主将(3年)=写真=、入耒田華月(3年)、投手は最速150キロのエース早瀬朔(3年)、昨夏の甲子園ベスト4メンバーが中心にチームをけん引する。何よりの強みは早瀬以外にも右腕・千原和博(3年)、龍頭汰樹(2年)、左腕・窪田瑶(3年)と先発、中継ぎ、抑えとどこでもこなせる投手陣がそろっている点だ。春の鹿児島大会、九州大会、県選抜大会と制し、勝ち上がる「経験」を積んでいる。最後のピースは「負けられない」プレッシャーを克服して「勝ちたい」エネルギーに替えられるかだろう。第8シード加治木は春先から急速に力をつけてきた県立校。エースで主将の宮路勇聖(3年)がチームの大黒柱だ。飛び抜けたスターはいないが、考える力のある選手がそろう。このパートでは鹿児島南VS鹿児島中央の鹿児島市内県立校対決を注目の好カードに挙げたい。
【鹿屋中央―樟南パート】注目は鹿屋中央の左腕・溝淵

第4シード・鹿屋中央は好左腕・溝淵爽(3年)=写真上=に注目したい。右打者の膝元に食い込むスライダーを投球の柱に、クレバーな投球が持ち味。例年に比べて打線の力がもう一つだが、今季は安定して4強に勝ち残っている。一方でもう一皮むけ切れず決勝に進めていないのも現実。何かが加われば、決勝、甲子園も十分狙える力はある。昨夏準優勝の樟南も戦力的には十分頂点を狙える。犬窪晴人(3年)=写真下=、五反田流星(3年)の投手陣、リードする篠原流依(3年)、4番・迫山寛汰(3年)、チームをまとめる政野宏太主将(3年)、決勝まで勝ち上がった夏を主力で経験しているメンバーがそろっている。今季、決勝に勝ち上がっていないのが不思議なくらい。こちらも神村学園の無敗記録を阻止する一番手に挙げられる。秘かに着目しているのは樟南が初戦で対戦する隼人工だ。昨秋8強入りし、21世紀枠の鹿児島県代表にも選ばれた。今年に入って県大会初戦敗退と結果は出ていないが、夏に照準を合わせているのは間違いない。好右腕・浅井聖(3年)の出来に注目したい。川内と枕崎、北薩と南薩を代表する雄同士の対戦は初戦の好カード。鹿児島情報や徳之島も上位に食い込める潜在力はある。

【鹿児島城西―出水中央】鹿児島城西VSれいめい、屈指の好カード

第3シード出水中央は坂口楓(3年)=写真=、竹山滉士朗(2年)、県下屈指の好左腕を擁するのが何よりの強み。特に3年生の坂口は力みのないフォームから、安定感のある投球が持ち味で、試合を作れる。竹山は2年生らしい勢いが持ち味だ。元プロ野球選手の右田一彦監督の采配も興味深い。第6シード鹿児島城西は優勝候補の一角に挙げられてもおかしくない底力がある。打線をけん引する川畑孝太郎主将(3年)、坂口虎太郎(3年)、投手陣をけん引する笹田隆雅(3年)、中間悠莉(3年)、チームの軸になる選手がいる。初戦で対戦するれいめい戦は誰もが認める1回戦屈指の好カード。140キロ左腕・伊藤大晟(3年)を擁するれいめいはシードされてもおかしくない実力を秘める。不気味な存在は鹿児島商である。今季は県大会で実績がないが、智将・塗木哲哉監督3年目の夏に何かを起こそうと虎視眈々と牙を研ぐ。近年着々と力をつけてきている鹿屋農や頴娃、出水工など地方県立校も意地を見せたい。
【鹿児島工―鹿児島実】実力校ひしめく混戦パート

昨秋と県選抜大会準優勝の鹿児島実が第2シードだが、このパートには私学、公立を問わず力を秘めたチームがひしめく混戦パートになりそうだ。鹿児島実はエース大野純之介(3年)が春以降故障で登板機会がないのが気になるところだったが、県選抜大会で右腕・末廣翔(3年)=写真上=がブレイク。最速140キロの球威と縦のスライダーで計算のできる投手へと成長した。案外、夏は大野を野手・打者に専念させ、末廣を投手の柱にする采配も面白いかもしれない。宮下正一監督からは「史上最弱」と突き放された年代だが、反骨心をみせて、打倒・神村学園の一番手に成長した。春準優勝の鹿児島工はエース不笠宗太郎(3年)、4番・中村武尊主将(3年)=写真下=、投打の軸がいる。これまで2人以外の選手が伸び悩んで勝てなかったが、この春の準優勝でチーム力をつけた。近年、公立校の中では群を抜いて安定感のある国分中央と、県選抜大会で神村学園をあと一歩のところまで追い詰めた鹿児島が初戦で対戦するのも楽しみだ。離島の雄・大島、伝統校・鹿児島玉龍、甲南VS鶴丸の「甲鶴戦」、好投手を擁する伊集院と打線の良い尚志館、加治木工VS武岡台、県立の実力校同士の対戦など注目校、カードがこのパートに集中している。
