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球夏2025第1日

「白球に食らいつく!」
夏・高校野球開幕

 【鹿児島】第107回全国高校野球選手権鹿児島大会は7月5日、鹿児島市の平和リース球場で開会式があり、夏の甲子園を目指した熱戦が開幕した。大会には64チームが出場。入場行進には55チームが参加した。開会式では川内の東大晴主将が「野球ができる環境が当たり前でないことを自覚し、支えてくれる人たちに感謝し、最後の最後まで白球に食らいつき、努力する」と宣誓した。

◇5日の結果

・1回戦(平和リース)  武岡台 2-0 加治木工  尚志館 7-6 伊集院

・1回戦(鴨池市民)  鹿屋工 8-0 明桜館(7回コールド)

◇6日の試合

・1回戦(平和リース) 9:00 甲南ー鶴丸 11:30 鹿児島実ー鹿児島高専

・1回戦(鴨池市民) 9:00 鹿児島南ー鹿児島中央  11:30 霧島ー川内商工

「3年力」を要所で発揮・武岡台

 武岡台にとっては4年ぶりとなる夏初戦突破だった。昨秋の県大会に続いての開幕戦の勝利。吉田公一監督は「チームの主力は1、2年生だけれども、要所では3年生が試合を決めてくれた」と3年生の頑張りに賛辞を送っていた。

 武岡台・柿本陽大(2年)、加治木工・宮島幸心(2年)、先発の2年生両右腕の活躍などで、互いに両者0行進の引き締まった好ゲームが、7回表まで続いた。決勝点となる2点が武岡台に入ったのは7回裏だったが、その流れを引き寄せる好守が7回表にあった。二死二塁。バックホームに備えて外野も前目に守っていた中、レフトオーバーの飛球が飛んできた。途中出場の左翼手・義岡壯仁主将(3年)が執念の背走を試みる。芯でとらえた打球ではなかったが、風があった分、打球は伸びた。「入ってくれ!」と念じて差し出したグラブにボールが収まり、事なきを得た。

 主将の好守がその裏の武岡台の攻撃に流れを呼び込む。一死から5番・久保順(3年)が意表を突くセーフティーバントで出塁。7番・久保田雄太郎(2年)の三塁強襲二塁打で二死二三塁と絶好機を作った。8番・森山太翔(1年)に代わって吉田監督が代打を託したのが、背番号16の3年生の秋好勇慎。本来なら6番をつけてもおかしくなかったが、2年生にレギュラーは譲ったものの、打撃の調子が上がっており、「ここぞ!」という場面で重要な役割が回ってきた。「使ってもらった以上、打って返すのが監督さんへの恩返し」と秋好。1ボール2ストライクと追い込まれ、相手の2年生エースの4球目の直球も勢いがあったが「僕の気持ちが勝った」と右越え2点適時三塁打となった=写真上=

 待望の先制点を挙げた後の給水タイム。「まだ、終わっていないぞ!」「俺たちは守りに自信を持っているぞ!」…ベンチの選手たちが得点に慢心せず、良いベンチワークの声掛けができており「私が何も指示する必要はなかった」(吉田監督)。6回からリリーフした3年生左腕エース・山小田圭佑は緩急を使った投球で、加治木工打線に本塁を踏ませなかった。 19人いる3年生のうちベンチ入りできたのは12人。7人がベンチを外れてスタンドからの応援だった。「ベンチに入った3年生が頑張らなかったら、7人の3年生に申し訳ない」(義岡主将)意気込みを、夏の開幕戦で示すことができた。

勝たせる応援をやりたい!・尚志館

 尚志館は伊集院の終盤の追い上げを振り切って、初戦をモノにした。初回に先制。5回表には相手のエラーを皮切りに、9番・知識夢叶(3年)の左前適時打で待望の追加点を挙げ、1番・田之上裕星(3年)の走者一掃中越え三塁打=写真上=などで一挙4点を加え、伊集院の下手投げの好投手・猪股陸斗(3年)=写真下=を攻略した。8、9回と追加点を挙げ、一方的な展開かと思われたが、伊集院が9回裏に意地を見せ、1点差まで追い上げるも、反撃はそこまでだった。

 尚志館の応援席では、吹奏楽部16人が応援演奏。控えの野球部員や保護者と一緒になって熱い応援を繰り広げた。吹奏楽部の新井和康教諭は群馬県の東京農大二高出身。高校時代、吹奏楽部は平日でも公休をとって野球の応援に行くのが当たり前だった経験があり、4年前から赴任した尚志館でも、「1回戦から応援に行きたくてうずうずしていた」。

 これまで夏の大会では、初戦の組合せが土日の平和リース球場の試合に当たらなかったが今回、開幕日の土曜日の試合を辻颯汰主将(3年)が引き当てたことで、念願の応援が実現した。炎天下の中だったが、保護者らの協力もあって、合間に水分補給や涼をとる工夫をしたこともあって、最後まで応援の熱気を届けることができた。

 思い返せば、3年生が1年生だった頃、1年生大会の大隅地区大会を応援したことがあり「エラーでボロボロだった」頃を新井教諭は知っている。最後の夏に「成長した姿」を実感した一方で、9回裏に1点差まで迫られ「まだまだ成長しないといけない」ことも実感できた。

 4年前の夏、8強入りして全校応援したことを覚えている。全校応援に慣れず、力を発揮できなかった姿を見て「チームを勝たせてあげる応援をしたい。日頃から全校応援の雰囲気に慣れておく必要がある」と新井教諭は考えた。この夏その「シミュレーション」が期せずして実現した。  1回戦辛勝で「やはり夏は簡単に勝てないと実感した」と辻主将。「今度は準々決勝でみんなを連れてきて、そんな中でも自分たちの力を発揮できるようにしたい」と決意を新たにしていた。

「高校野球」を実感(奄美新聞・熱球譜)
川崎良徳(古仁屋)

 今大会、奄美勢の試合は7日以降に組まれているため、入場行進と開会式に参加するチームはないと思われた中、鶴翔・薩摩中央・串木野・川辺・古仁屋(連合②)の川崎1人だけが唯一奄美からの参加者となった=写真上=

 試合は2日後だが「同じチームのメンバーの1人として開会式に参加したかった」と鹿児島入り。連合②は入場行進も最後の登場で、その中でも最後尾で行進した。グラウンドに足を踏み入れると「他のチームと観客の多さに圧倒されそうになった」が多くの人が見守りながら楽しみにしている姿に「自分も高校野球を3年間頑張ってきたんだな」と実感がわき、大会に参加して野球ができる喜びをかみしめながらの行進と開会式となった。試合は2日後に志學館・開陽・鹿児島修学館・高特支・山川の連合①と対戦する。「同じ、連合チームでも僕たちの方がちゃんと野球をやってきた」ことを示す試合にしたいと張り切る。普段一緒に練習できない分、試合まで2日間はチームメートと一緒に練習できる絶好の機会だ。

 古仁屋の野球部員は3学年で1人。「3年生の自分が引退した後、野球部が存続するのか」は分からない。ただ一ついえるのは「先輩たちからの伝統を受け継ぎ、自分も古仁屋の野球部員として3年間頑張ってきた」集大成をこの夏にぶつけるだけだ。

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