総合調査で迅速な実態究明を
トカラ地震に関する総合調査が始動

海底に地震計を投入する様子を解説する八木原准教授(右端)
7月からトカラ列島近海において断続的に発生している地震活動について、国の特別研究促進費を活用した総合調査が始まった。8月8日は鹿児島大学で、その概要に関する記者発表があった。総合調査は同大の理工学研究科附属南西島弧地震観測所の八木原寛准教授を研究代表者とする8機関15人の研究者で実施する。研究は5つのテーマに分かれている。
①陸上地震観測による地震活動のモニタリング ②トカラ列島の衛星測地による地殻変動の調査 ③海底地震観測による地震活動の解明 ④地震活動とマグマ活動の関連解明 ⑤住民避難および避難生活の実態調査となっており、地震学、地質学、社会科学などの専門家が調査研究に当たる。
7月の地震発生直後からトカラ列島各地の陸上地震計による観測は続けられている。加えて8月には長崎大学水産学部の練習船・長崎丸が1―5日にトカラ列島近海を航海し、3日に震源地に近い海域10ケ所に海底地震計を投入した。こちらはオフラインでの計測となるために、鹿大水産学部の練習船・かごしま丸が11月中旬頃に回収する予定。

通常、この種の調査は費用の捻出、船の手配などに時間を要するが今回は国から約1800万円の特別研究促進費が出ることにより、発生から約1カ月、未だ収束していない短期間での調査研究が実現した。研究グループは日頃から共同研究に取り組むことも多く「気心の知れた仲」(八木原准教授)。現在進行中の地震活動の実態と原因の解明を迅速に進め、今後の地震活動推移の予測や、同地域だけでなく他の島嶼域における将来の地震災害の軽減につながる重要な知見を得ることを目的としている。